大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)70 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人安田幹太、同安田弘の上告理由第一点について。

所論は、原審の適法にした事実の認定を非難するにすぎない。

同第二点について。

原審は、「訴外D青果貿易株式会社が所論定期積立預金二口に加入した事情は内

心本件借入金百万円の弁済にあてる意図の下に、その見返りの意味においてしたも

のであつたが、訴外E信用金庫との間にこれが払戻金と右借入金百万円との間に相

殺の効果を生ずべき相殺の予約をなしたものではなく、従つて同信用金庫において

は、これを通常の預金として取扱つた。」という事実を認定しているだけであつて、

この事実は原判決挙示の証拠によつてこれを肯認することができないものではない。

所論は、畢竟原審の右事実認定を争うものであつて採り得ない。

同第三点について。

原判決が所論の事実を認定するに当り挙示している証拠のうち、第一審証人Fの

証言中には、前記訴外信用金庫から前記訴外会社に対し、昭和二七年九月の決算期

に、所論預金を短期借入金に充当して呉れと申入があつた旨の陳述がある(記録六

四丁六項)。従つて、原判決が所論相殺の通知があつたものと認定したのは、証拠

にもとづかない事実認定とはいい難く、所論は採り得ない。

同第四点について。

原判決の挙示する証拠を綜合すれば、所論定期積立預金払戻債権は他の債務と相

殺されて全部消滅し、被上告人においてこれを援用して本件金百万円の債務と相殺

する余地はなかつた事実を肯認するに足りる。

- 1 -

所論は、原審の認定していない事実を前提として原判決を論難するものであつて、

とり得ない。

同第五点について。

所論は、立法論としては兎も角わが現行法の解釈としては独自の見解をいでない

ものであつて、到底採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!